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新美南吉 Nankichi Niimi 1913.07.30〜1943.03.22

売られていった靴

うられていったくつ

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靴屋くつやのこぞう、兵助へいすけが、はじめていっそくの靴くつをつくりました。

するとひとりの旅人たびびとがやってきて、その靴くつを買いました。

兵助ひょうすけは、じぶんのつくった靴くつがはじめて売うれたので、うれしくてうれしくてたまりません。

「もしもし、この靴くつずみとブラシをあげますから、その靴くつをだいじにして、かあいがってやってください。」

と、兵助へいすけはいいました。

旅人たびびとは、めずらしいことをいうこぞうだ、とかんしんしていきました。

しばらくすると兵助ひょうすけは、つかつかと旅人たびびとのあとを追っかけていきました。

「もしもし、その靴くつのうらの釘くぎがぬけたら、この釘くぎをそこにうってください。」

といって、釘くぎをポケットから出だしてやりました。

しばらくすると、また兵助ひょうすけは、おもいだしたように、旅人たびびとのあとを追っかけていきました。

「もしもし、その靴くつ、だいじにはいてやってください。」

旅人たびびとはとうとうおこりだしてしまいました。

「うるさいこぞうだね、この靴くつをどんなふうにはこうとわたしのかってだ。」

兵助へいすけは、

「ごめんなさい。」

とあやまりました。

そして、旅人たびびとのすがたがみえなくなるまで、じっとみおくっていました。

兵助ひょうすけは、あの靴くつがいつまでもかあいがられてくれればよい、とおもいました。

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Where this text comes from

This work is in the public domain — its copyright has expired. The digital text was produced by volunteers at Aozora Bunko (青空文庫), Japan's free digital library, from the printed edition named below.

Source edition (底本)
底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書


   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行

底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書

入力:めいこ

校正:鈴木厚司、もりみつじゅんじ

2003年9月29日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
Typed by (入力)
めいこ
Proofread by (校正)
もりみつじゅんじ、鈴木厚司

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