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新美南吉 Nankichi Niimi 1913.07.30〜1943.03.22

落とした一銭銅貨

おとしたいっせんどうか

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雀すずめが一銭銅貨いっせんどうかをひろいました。

雀すずめはうれしくてうれしくてたまりません。

ほかの雀すずめをみると、

「ぼくおかねをもってるよ。」

といって、くわえていた一銭銅貨いっせんどうかを砂すなの上においてみせてやりました。

さて、日ひぐれになりました。すこしくらくなってきました。

「や、遊あそびすぎちゃった。これはたいへんだ。」

と雀すずめは、一銭銅貨いっせんどうかをくわえて、おおいそぎで水車すいしゃ小屋ごやの方へとんでいきました。この雀すずめは水車すいしゃ小屋しょうおくののきばにすんでいたのでありました。

まだ水車すいしゃ小屋しょうおくにつかないまえ、はたけの上をとんでいたとき、あまりあわてたので、雀すずめは銅貨どうかを落おとしてしまいました。

「や、これはしまった。」

けれどあたりはもう暗くて、雀すずめの目はよくみることができなくなっていたので、

「あしたの朝さがしにこよう。」

といって、そのまま水車すいしゃ小屋ごやの巣すにかえりました。

その夜はたいへん寒かったので、雀すずめはかぜをひいてしまいました。

それもそのはず、雪がどっさりふったのでありました。

雀すずめはかぜがなかなかなおらないので、まいにち藁わらの中にくるまって、落おとした一銭銅貨いっせんどうかのことを思っていました。

やがて雀すずめはよくなりました。そこで一銭銅貨いっせんどうかをさがしにいきました。

まだ雪ははたけの上につもっていました。

「わたしの、わたしの一銭銅貨いっせんどうか、この下にいるのかい。」

と、雀すずめは雪の上からききました。

すると雪ゆきの下したから、

「いえいえ、ここにはありません。」

とだれかがこたえました。

雀すずめはまたべつのところへいって、

「わたしの、わたしの一銭銅貨いっせんどうか、この下にいるのかい。」

とききました。

するとまた雪ゆきの下したから、

「いえいえ、ここにはありません。」

とこたえました。

雀すずめはあちらこちらとたずねてあるきました。

するととうとう、

「はいはい、ここにありますよ。雪がとけたらおいでなさい。」

とこたえました。

雀すずめは雪のとけた日にまたはたけにやっていきました。銅貨どうかはちゃんとありました。

みるとはたけにはいっぱいふきのとうがでていました。銅貨どうかのあるところを雀すずめにおしえたのはこのふきのとうだったのでしょう。

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Where this text comes from

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Source edition (底本)
底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書


   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行

底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書

入力:めいこ

校正:もりみつじゅんじ

2002年12月26日作成

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Typed by (入力)
めいこ
Proofread by (校正)
もりみつじゅんじ

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