Nihoner

新美南吉 Nankichi Niimi 1913.07.30〜1943.03.22

一年生たちとひよめ

いちねんせいたちとひよめ

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学校がっこうへいくとちゅうに、大おおきな池いけがありました。

一年ひととせ生たちが、朝そこを通りかかりました。

池の中にはひよめが五六ごろくっぱ、黒くうかんでおりました。

それをみると一年ひととせ生たちは、いつものように声をそろえて、

ひイよめ、

ひよめ、

だんごやアるに

くウぐウれッ、

とうたいました。

するとひよめは頭からぷくりと水のなかにもぐりました。だんごがもらえるのをよろこんでいるようにみえました。

けれど一年ひととせ生たちは、ひよめにだんごをやりませんでした。学校がっこうへゆくのにだんごなどもっている子はありません。

一年ひととせ生たちは、それから学校がっこうにきました。

学校がっこうでは先生せんせいが教えました。

「みなさん、うそをついてはなりません。うそをつくのはたいへんわるいことです。むかしの人は、うそをつくと死んでから赤鬼あかおにに、舌したべろを釘くぎぬきでひっこぬかれるといったものです。うそをついてはなりません。さあ、わかった人は手をあげて。」

みんなが手をあげました。みんなよくわかったからであります。

さて学校がっこうがおわると、一年ひととせ生たちはまた池のふちを通りかかったのでありました。

ひよめはやはりおりました。一年ひととせ生たちのかえりを待っていたかのように、水の上からこちらをみていました。

ひイよめ、

ひよめ、

と一年ひととせ生たちは、いつものくせでうたいはじめました。

しかし、そのあとをつづけてうたうものはありませんでした。「だんごやるに、くぐれ」とうたったら、それはうそをいったことになります。うそをいってはならない、と今日きょう学校がっこうでおそわったばかりではありませんか。

さて、どうしたものでしょう。

このままいってしまうのもざんねんです。そしたらひよめのほうでも、さみしいと思おもうにちがいありません。

そこでみんなは、こう歌いました。

ひイよめ、

ひよめ、

だんご、やらないけれど、

くウぐウれッ

するとひよめは、やはりいせいよく、くるりと水をくぐったのであります。

これで、わかりました。ひよめはいままで、だんごがほしいから、くぐったのではありません。一年ひととせ生たちによびかけられるのがうれしいからくぐったのであります。

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Where this text comes from

This work is in the public domain — its copyright has expired. The digital text was produced by volunteers at Aozora Bunko (青空文庫), Japan's free digital library, from the printed edition named below.

Source edition (底本)
底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書


   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行

底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書

※底本では題名の「ひよめ」に傍点が付いています。

入力:めいこ

校正:鈴木厚司、もりみつじゅんじ

2003年9月29日作成

青空文庫作成ファイル:

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Typed by (入力)
めいこ
Proofread by (校正)
もりみつじゅんじ、鈴木厚司

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