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宮沢賢治 Kenji Miyazawa 1896.08.27〜1933.09.21

蛙のゴム靴

かえるのゴムぐつ

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それからしたブンうちありました

むかすすきのげにベンうちありました

びきおんななら大きさもたいていおんなどれおと意気いきいたずらものした

あるれ方カンブンベンカンつめくさ広場ひろばすわって雲見くもみというこって居りまし一体いったいどもみんなみねとがだいすきですじっさいあのまっしろプクプクした玉髄ぎょくずいようあられようまた蛋白石たんぱくせき刻んこさえた葡萄ぶどう置物おきものようたれ立派りっぱ見えますどもことそれ見事みごとなのですながながないですそのわけのみねというものどこいますそれからいますそれ本人ほんにんならばちょうど花見はなみとか月見つきみとかところども雲見くもみやります

どう立派りっぱだねだんだんネタるね。」

うんうすい金色こんじきだね永遠えいえん生命いのち思わせるね。」

ぼくたち理想りそうだね。」

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このごろヘロンゴムはやる。」ヘロンというのです人間じんかんというこです

うんよくみんないてるようだね。」

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全くほしいあいついてならくりいがこわくない。」

ほしいもんなあ。」

れる工夫くふうないだろう。」

ないわけないだろうただたちヘロンのと大きさも大分おういたちがうからこしらえ直さないと駄目だめだな。」

うんそれそうさ。」

さてのみ全くくずれあたり藍色あいいろなりましそこベンブン

さよなら。」ってカンわかれ勇ましく泳い自分じぶんうちって行きまし

あとカンうで組んかんがまし桔梗色ききょういろ夕暗ゆうやみです

しばらくしばらくたってからやっとギッギッばかり鳴きましそして草原くさはらぺたぺた歩いにやってまいまし

それからうんと細くして

野鼠のねずみさん野鼠のねずみさんもうしもうし。」呼びまし

ツン。」野鼠のねずみ返事へんじをしひょこりましそのうすぐろいもう見えないくらいぐらです

野鼠のねずみさん今晩はまえさんたのあるきいないかね。」

いやそれはきいあげよう去年こぞ蕎麦団子そばだんご食べチブスになっひどいわずらいをしたときにあれほど親身しんみ介抱かいほうながらそのわすれしまうもんかね。」

そうかそんならまえさんゴム一足いっそく工夫こうふして呉れいかどうもいいんこしらえなおから。」

ああいいとも明日あすまではきっとってあげよう。」

そうかそれどうありがとうはおねがするさよなら。」

カンおおよろこび自分じぶんうちってしまいました

晩方ばんがたです

カン

野鼠のねずみさん野鼠のねずみさんもうしもうし。」やさしい呼びまし

野鼠のねずみいかにつかたらしくとろんとしはぁあとためいきいてそれだかたいへんおこましたがいきなりちいさなゴムカン投げ出しまし

そらカンさんって呉れひどい難儀なんぎしたたいへん手数てすうしたいのちがけ心配しんぱいしたまえこれはらすこはらかしらん。」云いながら野鼠のねずみぷいっとってしまっした

カン野鼠のねずみ激昂げっこうあんまりひどいしばらくあきいましたがなるほどかんがそれ無理むりありませんしたまず野鼠のねずみただゴムたのむただねこたのむたのむたのむ自分じぶん金沓かなぐつもらときなんとかかんとかごまかしゴムをもう一足いっそくそれからそれわたわたただわたただ野鼠のねずみわたそのわたうもいずれあとよこせとかとか気味きみわることばがついていたでしょうそのほかあとゴムごまかしたことがわかったら人間じんかんからよっぽどひどいあわされるでしょうそれ全体ぜんたい野鼠のねずみ心配しんぱいしてかんがえるですからとてもさわるほどつらいですけれどカンその立派りっぱゴムもううれしく嬉しくむずむずした

早速さっそくそれたたたり引っぱったりして丁度ちょうど自分じぶんうにこしらえなおにたにたわらながらはめそのいちばん歩きまわり暁方あけがたになってからぐったりつか自分じぶんがえましそしてねむまし

カンカンもう雲見くもみ時間じかんおいおいカン。」カンあけましブンベンとがしきり自分じぶんからだゆすぶっいますなるほどうすい黄金色きんいろ美しくそびいます

はもうゴムいてるどこからしたん。」

いやこれひどい難儀なんぎをしたいへん手数てすうをしそれからいのちがけほどいたしてって来たんたちとても持てまい歩い見せようそらいい工合ぐあいだろうがこいいてすっすっと歩いたらまるで芝居しばいうだろうまるでカーうだろうイーうだろう。」

うんにいいねたちほしいけれど仕方しかたないなあ。」

仕方しかたない。」

銀色ぎんいろ一番いちばんだかですけれどベンブンなんかいでゴムばかりいるした

そのときむかからうつくしいかえるむすめはねてつゆくさのむかからはずかしそうしました

ルラさん今晩はすか。」

さんむこさん探し来いって。」すこ平ったくしました

なんかどうなあ。」ベンいました

あるいはなんかいいかもしれないな。」ブンいました

ところカン一言いちごん云わすっすっとそこら歩いていたばかりです

あらあたしもうきめ。」

たれ?」ぱちぱちせました

カンはまだすっすっと歩いいます

あの。」左手ひだりてかくし右手みぎてひろげカンしました

おいカンじょうさんきみきめたと。」

?」

カンはけろんとしたかおつきをしこっちまし

さんおまえさん。」

カン急いこっちまし

さん今晩はあるんですかなるほどそうすかよろしい承知しょうちしましたそれいつにしましょう。」

がいいわ。」

それいいです。」カンはすましてまし

そこがいままネタになっながいます

そんならあしうちってみんなそう。」

ええ、」

さよなら

さよなら。」

ベンブンはぶりぶりっていきなりくるりうしろむかってしまいましたしゃくさわっまぎれあのせきただちぇっちぇっと泳いしたそのあとカンよろこびうとったらもうとてもありませんあちこちあるいあるいから二十にじゅうのぼころやっとうちって寝ました

さてルラいろいろ仕度したくをしたりカン談判だんぱんをしたりだんだんまとまりましいよいよあさって婚式こんしきいう明方あけがたカンゆめ

今日はどうしてみんな歩い明後日あさって招待しょうたいしてないといけいな。」いましたころがそ夜明よあけからかけいよいよ降りはじめましガアガアカンうちつめくさうすにごかぶっぼんやりとかすんでえましたそれカン勇んましせきってたいへん幾本いくほんものたでつゆくさすっかりなりまし飛び一寸ちょっとこわいくらいですカンけれど一本いっぽんたでからチャン飛び込んツイツイツイツイおよましおよながらどんどんされましそれとにかくむかのぼりまし

それからこけずんずんとおほんものあるく横切っ大粒おおつぶたれゴムピチャピチャ云わせながらしたブンうち高くさけまし

今日は今日は。」

どなたすかああはいりたま。」

うんどうひどいだねパッセン大街道だいかいどう今日はいきものかげさえない。」

そうかずいぶんひどい。」

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さよなら。」

カンピチャピチャってすすきのベンうちにやってまいまし

今日は今日は。」

どなたすかああはいれ。」

ありがとうどうひどいパッセン街道かいどう今日きょうはしんとしてるよ。」

そうかずいぶんひどい。」

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ああそんなことどこいたっけねい行こう。」

どうさよなら。」

さよなら。」そしてカンピチャピチャ歩きプイプイ泳いうちってやっと安心あんしんしました

丁度ちょうどのころブンベンところへやってした

今日は今日は。」

はいやあはいれ。」

カン来たろう。」

うんいまいましい。」

全く畜生ちくしょうとかひどいにあわしやりたい。」

うまいことかんが明日あすはれたら婚式こんしき一寸ちょっと散歩さんぽしようってあいつ引っぱりあそこかや刈跡かりあとあるくんらもすこいただろうまあ我慢がまんしてするあいつのゴムめちゃめちゃなるだろう。」

うんそれはいいねしかしはまだそれじゃいよ婚式こんしきがすんだらあいつら引っぱりあのほしくいおとやりたいかぶせ置こうそれがやって面白おもしろ。」

それもいいねじゃはれたら。」

うん。」

さよなら。」

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Source edition (底本)
底本:「新編風の又三郎」新潮文庫、新潮社


   1989(平成元)年2月25日発行

   1989(平成元)年6月10日2刷

入力:蒋龍

校正:noriko saito

2008年11月30日作成

青空文庫作成ファイル:

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Typed by (入力)
蒋龍
Proofread by (校正)
noriko saito

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