Nihoner

芥川竜之介 Ryunosuke Akutagawa 1892.03.01〜1927.07.24

犬養君に就いて

いぬかいくんについて

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犬養いぬかい君の作品さくひんは大抵たいてい読んでいるつもりである。その又僕の読んだ作品さくひんは何いずれも手を抜いたところはない。どれも皆丹念たんねんに出来上っている。若もし欠点けってんを挙あげるとすれば余あまり丹念たんねんすぎる為に暗示あんじする力を欠き易やすい事であろう。

それから又犬養いぬかい君の作品さくひんはどれも皆柔にこやかに美うつくしいものである。こう云いう柔やわらかい美しさは一寸ちょっと他の作家達いえさとには発見はっけん出来しゅったいない。僕はそこに若々しい一本いっぽんの柳に似た感かんじを受うけている。

いつか僕は仕事しごとをしかけた犬養いぬかい君に会った事があった。その時僕の見た犬養いぬかい君の顔は(若もし失礼しつれいでないとすれば)女人にょにんと交った後のようだった。僕は犬養いぬかい君を思おもい出だす度にかならずこの顔を思い出している。同時どうじに又犬養いぬかい君の作品さくひんの如何いかにも丹念たんねんに出来上っているのも偶然ぐうぜんではないと思っている。

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Source edition (底本)
底本:「大川の水・追憶・本所両国 現代日本のエッセイ」講談社文芸文庫、講談社


   1995(平成7)年1月10日第1刷発行

底本の親本:「芥川龍之介全集 第一~九、一二巻」岩波書店

   1977(昭和52)年7、9~12月、1978(昭和53)年1~4、7月発行

入力:向井樹里

校正:砂場清隆

2007年2月12日作成

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Typed by (入力)
向井樹里
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砂場清隆

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