Nihoner

有島武郎 Takeo Arishima 1878.03.04〜1923.06.09

或る女 1(前編)

あるおんな

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新橋しんばしわた発車はっしゃらせるベルまではいえなけむった空気くうき包まれ聞こえ葉子ようこ平気へいきそれ聞いたが車夫しゃふ飛んそして鶴屋つるやいうのかどの宿屋やどや曲がっいつ人馬じんばむらがるあの共同きょうどう井戸いどのあたりけぬける停車ていしゃぐち大戸おうどしめようとする駅夫えきふあらそながらがたしまりかった突っ立っこっち見まもっいる青年せいねん姿

まあおそくってすみませんした……まだますかしら

葉子ようこいいながら階段かいだんのぼる青年せいねん粗末そまつ麦稈むぎわら帽子ぼうしちょっと脱い黙っままあお切符きっぷした

おやなぜ一等いっとうなさらかったそうしないといけいわけがあるからかえくださいまし

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これわすなりまし

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青年せいねんばれのと改札かいさつがみがみどなり立てうにするど神経しんけいすぐ彼女かのじょあまのじゃくした葉子ようこまで急ぎ気味ぎみであっあゆぴったりとどしまって落ち付い車夫しゃふほう向きなおっ

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どうすみませんした

といって切符きっぷさし出しながら改札かいさつ咲いうにほほえん見せ改札かいさつばかになっようかおつきをしながらそれおめおめ切符きっぷあな入れ

プラットフォーム駅員えきいんおくびとっているかぎ人々二人ふたりほう向けいたそれ全く気づきもしないよう物腰ものごし葉子ようこ親しげに青年せいねんべてしずしず歩きながら車夫しゃふけたつつものあるかあてみろとか横浜よこはまうに自分じぶんひくはないとか切符きっぷ一緒いっしょしまっておいくれろかいって音楽おんがくうにデリケートなそ指先ゆびさきわざとらしく青年せいねんれる機会きかいもと列車れっしゃちゅうからあるかぎ二人ふたり見迎え見送みおく青年せいねん物慣れない処女しょじょうにはにかんしかも自分じぶんながら自分じぶんおこっている葉子ようこおもしろくながめられ

いちばん近い昇降しょうこうっていた車掌しゃしょうポッケット突っ込んくつ爪先つまさき待ちどおしそうにたいていたが葉子ようこデッキれるいきなりつんざくばかり鳴らしたそして青年せいねん青年せいねん古藤ことういった葉子ようこ続い飛び乗っ機関きかん応笛おうてき前方ぜんぽうにぎやかさざめきってひび渡っ

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Where this text comes from

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First published
「白樺」1911(明治44)年1月~1913(大正2)年3月(『或る女のグリンプス』として)
Source edition (底本)
底本:「或る女 前編」岩波文庫、岩波書店

   1950(昭和25)年5月5日第1刷発行

   1968(昭和43)年6月16日第27刷改版発行

   1998(平成10)年11月16日第42刷発行

入力:真先芳秋

校正:渥美浩子

1999年10月17日公開

2013年1月8日修正

青空文庫作成ファイル:

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Typed by (入力)
真先芳秋
Proofread by (校正)
渥美浩子

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