Nihoner

寺田寅彦 Torahiko Terada 1878.11.28〜1935.12.31

秋の歌

あきのうた

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チャイコフスキーいう小曲しょうきょくあるジンバリスト演奏えんそうしたこのレコードっているそしてふれこれひとしずこの幻想げんそう世界せかいわけ

北欧ほくおうなき平野ひらの白樺しらかばあるなげうに木々もう黄金色こがねいろ色づいいるかたぶ夕日せきじつからさびしいわた落葉おちばうつくしいうつくしいうにふりそそ

荒れ小径こみちあてなく彷徨さまよい歩く並んマリアナミハイロウ歩いいる

二人ふたり黙っ歩いいるしかし二人ふたり想いヴァイオリンになっ高く低く聞こえいるそのあらゆる言葉ことばしてないかなしみ現わしものある話せマリアナこたえる続き続いえる二人ふたり立止たちどまるそしてじっと見交みかわす二人ふたりっている

二人ふたりはま歩きより高くふるえやがてむせうに

ヴァイオリン起伏きふくする山彦やまひここたえるうにかすかなセロよう響いそれ消え追い縋りもするうにまたヴァイオリン高音こうおん響い

このかすかな伴奏ばんそうわか未来みらいのこ二人ふたり想い反響はんきょうあるこれ限りなく果敢はかなくさびしい

あかあかつれない沈ん二人ふたりはずれって云いわせうにとおかがや最後さいご閃光せんこう見詰みつめる

一度ひとたび乾いいたまたなくながれるしかしそれはもうかなしみはなくて永久えいきゅうさびしいさびしいあきらめある

迫っマリアナ姿はもう見えないただ一人ひとり淋しくはずれ切株きりかぶかけかすかな微光びこう消え名残なごりいる

つくっているそしてのせさきからした煙草たばこほとりカーペットくだける

大正たいしょう一年ひととせ渋柿しぶがき』)

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Where this text comes from

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First published
「渋柿 第一〇一号」1922(大正11)年9月10日
Source edition (底本)
底本:「寺田寅彦全集 第一巻」岩波書店

   1996(平成8)年12月5日発行

底本の親本:「寺田寅彦全集 第二巻」岩波書店

   1985(昭和60)年9月5日第3刷発行

初出:「渋柿 第一〇一号」

   1922(大正11)年9月10日発行

※初出時の署名は「寺田藪柑子」です。

入力:Nana ohbe

校正:佳代子

2003年12月14日作成

2016年2月25日修正

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Typed by (入力)
Nana ohbe
Proofread by (校正)
佳代子

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