Nihoner

太宰治 Osamu Dazai 1909.06.19〜1948.06.13

愛と美について

あいとびについて

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兄妹きょうだいってみんなロマンスだっ長男ちょうなん二十にじゅう学士がくしあるひとせっするときすこ尊大そんだいぶる悪癖あくへきあるけれどもこれ自身おのれかばめんであっまこと弱くとてもやさしい弟妹おとうとたち映画えいがにいってこれ駄作ださく愚劣ぐれつだと言いながらその映画えいがさむらい義理ぎり人情にんじょうまいってまずまっさき泣いしまういつもこの長兄ちょうけいあるそれきまっいた映画えいがてから尊大そんだいむっと気嫌きげんになっみちみち一言いちごんをきかない生れいまだ一度ひとたび嘘言うそいうものいたことがないと躊躇ちゅうちょ公言こうげんしているそれどうかとわれるけれどしかし剛直ごうちょく潔白けっぱく一面いちめんたしかに具有ぐゆうしていた学校がっこう成績せいせきあまりよくなかった卒業そつぎょうどこずと固く一家かずやっているイプセン研究けんきゅうしているこのごろ人形にんぎょうまたかえ重大じゅうだい発見はっけんをしすこぶ興奮こうふんしたノラあのときをしいた医者いしゃランクをしいたのだそれ発見はっけんした弟妹おとうとたち呼び集めそのところ指摘してき大声たいせい叱咤しった説明せつめい努力どりょくたが徒労とろうであっ弟妹おとうとたちどうだかかしげにやにや笑っいるだけ一向いっこう興奮こうふん示さいったい弟妹おとうとたちこの甘くいるなめいるふうある長女おさめ二十にじゅういまだ嫁が鉄道てつどう通勤つうきんしているフランスかなりよくきた脊丈せたけあっすごくいる弟妹おとうとたちばれるとがある短くってロイド眼鏡がんきょうかけいる派手はですぐ友達ともだちなり一生いっしょう懸命けんめい奉仕ほうしして捨てられるそれ趣味しゅみある憂愁ゆうしゅう寂寥せきりょうひそかたのしむあるけれどいちおんな勤務きんむしているわか官吏かんり夢中むちゅうなりそうしやはり捨てられたときにそのときだけ流石さすがしんからげっそりしてさもあり悪くなったといて週間しゅうかんそれからくび繃帯ほうたい巻いやたらせきをしながら医者いしゃ見せったらレントゲン精細せいさいしらべられまれ頑強がんきょう肺臓はいぞうあるといって医者いしゃほめられ文学ぶんがく鑑賞かんしょう本格ほんかくであっよく東西とうざい問わないちからって自分じぶんやらこっそり書いいるそれ本箱ほんばこかく逝去せいきょ発表はっぴょうのこ書きしたたられ紙片しへんその蓄積ちくせきされ作品さくひんきちんと載せられいるある書き改められたりげつ書き直さたりきにとなっいたりするある次男じなん二十にじゅうこれ俗物ぞくぶつであっ帝大ていだい学部がくぶ在籍ざいせきけれどあまり学校がっこうぎょうかなかったからだよわあるこれほんもの病人びょうにんあるおどろくほどうつくしいをしいた吝嗇りんしょくある長兄ちょうけいひとまされモンテエニ使っラケットしょうするへんてつない古ぼけラケット五十ごじゅう値切っって得々とくとくとしいたときなど次男じなんひとりあま痛憤つうふん大熱だいねつ発しそのためとうとう腎臓じんぞうわるくしたひとどんなひと蔑視べっしたがる傾向けいこうひとかいうッという奇怪きっかいからす天狗てんぐわらごえ愉快ゆかいきわまるわらごえはばからはっするあるエテ一点いってんあるこれとてもエテ素朴そぼく精神せいしん敬服けいふくしているなくエテ高位こうい高官こうかん傾倒けいとうしているらしいふしなあないあやしいものあるけれど兄妹きょうだいみんな即興そっきょうなど競作きょうさくする場合ばあいいついちばんあるできいる俗物ぞくぶつだけ情熱じょうねつ客観きゃっかん把握はあくはっきりしている自身おのれその精進しょうじんすれあるいは一流いちりゅう作家さっかなれるかも知れないこのわるい女中じょちゅうほど好かれいる次女じじょ十一といちナルシッサスあるある新聞しんぶんミス日本にぽん募っいたときあのきによほど自己じこ推薦すいせんしようかと身悶みもだした大声たいせいあげわめき散らしかったけれど身悶みもだ自分じぶん身長しんちょう足りないことにつき断念だんねんした兄妹きょうだいうちでひとり目立っ小さかったあるけれどけっしてみっともないものはなかったなかなかある深夜しんや裸形らけいむかっと可愛く微笑したりふっくらしたじろ両足りょうあしヘチマコロンってその指先ゆびさきそっと自身おのれ接吻せっぷんしてうっとりつぶってたりいち突いようちいさい吹出ふきだし物し憂鬱ゆううつのあまり自殺じさつ計ったことがある読書どくしょ特色とくしょくある明治あきはる初年しょねん佳人かじん奇遇きぐう経国けいこく美談びだんなど本屋ほんやから捜しひとりでくすくすわらながら読んいる黒岩くろいわ涙香るいこう森田もりた思軒しけんなど飜訳ほんやく好んどこから入れのか知れ同人どうじん雑誌ざっしたくさん集め面白おもしろなあうまいなあ真顔まがおつぶやながらからまでたんねん読破どくはしているほんとう鏡花きょうかひそかもっと愛読あいどくしていた末弟ばっていあることし一高いっこう理科りか甲類こうるい入学にゅうがくたばかりある高等こうとう学校がっこうはいってからかれ態度たいど俄然がぜんかわったちたちそれ可笑おかしくならないけれど末弟ばっていおおまじめある庭内ていないどんなささやか紛争ふんそうかなら末弟ばっていっとたのまもせぬの思案しあんげに審判しんぱんおろこれはじめ家中かちゅう閉口へいこうしているいきおい末弟ばってい一家かずやちゅうから敬遠けいえんある末弟ばっていそれ不満ふまんならない長女おさめかれぶっとふくれ気嫌きげん見かねひとりで大人おとなになっいて大人おとなかなしきいう和歌わかつくって末弟ばってい与えかれ在野ざいや遺賢いけん無聊ぶりょうなぐさめやったうであいくるしいきょうだいたちかとかれかまいすぎそれためかれは多少たしょうおっちょこちょいところある探偵たんてい小説しょうせつこのときどきひとり部屋へや変装へんそうしてみたりなどしいる語学ごがく勉強べんきょう称し和文かずふみ対訳たいやくドイルものって和文かずふみところばかり読んいるきょうだいのこ心配しんぱいしている自分じぶんだけだとひそか悲壮ひそうたれいる

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First published
「愛と美について」竹村書房、1939(昭和14)年5月
Source edition (底本)
底本:「新樹の言葉」新潮文庫、新潮社

   1982(昭和57)年7月25日初版発行

   1992(平成4)年11月15日17刷

初出:「愛と美について」竹村書房

   1939(昭和14)年5月

入力:田中久太郎

校正:鈴木厚司

2001年11月1日公開

2016年2月1日修正

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Typed by (入力)
田中久太郎
Proofread by (校正)
鈴木厚司

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