Nihoner

山崎富栄 Tomie Yamazaki 1919.09.24〜1948.06.13

雨の玉川心中 02 遺書

あめのたまがわしんじゅう

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私ばかりしあわせな死しに方をしてすみません。奥名おくなとすこし長ながい生活せいかつができて、愛情あいじょうでもふえてきましたらこんな結果けっかともならずにすんだかもわかりません。山崎やまざきの姓に返ってから死しにたいと願っていましたが……、骨は本当ほんとは太宰だざいさんのお隣となりにでも入れて頂ければ本望ほんもうなのですけれど、それは余あまりにも虫のよい願ねがいだと知っております。太宰だざいさんと初はじめてお目めもじしたとき他に二、三人のお友達ともだちと御一緒いっしょでいらっしゃいましたが、お話を伺っておりますときに私の心にピンピン触ふれるものがありました。奥名おくな以上いじょうの愛情あいじょうを感かんじてしまいました。御家庭かていを持っていらっしゃるお方で私も考かんがえましたけれど、女として生き女として死しにとうございます。あの世よへ行ったら太宰だざいさんの御両親りょうしん様にも御あいさつしてきっと信じて頂いただくつもりです。愛して愛して治さんを幸しあわせにしてみせます。

せめてもう一、二年生きていようと思ったのですが、妻は夫と共にどこ迄も歩あゆみとうございますもの。ただ御両親りょうしんのお悲かなしみと今後こんごが気掛きがかりです。

(注・この遺書いしょは昭和二かずじ十二とうに年八月二十にじゅう九日付ひずけとなっている)

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Where this text comes from

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Source edition (底本)
底本:「雨の玉川心中」真善美研究所

   1977(昭和52)年6月13日初版発行

※表題、副題は、底本編集時に与えられたものです。

※底本巻末の編者による注記は省略しました。

※(注・)ではじまる注記は編集部によるものです。

※底本巻末の編者による語注は省略しました。

入力:江村秀之

校正:酒井和郎

2017年4月3日作成

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Typed by (入力)
江村秀之
Proofread by (校正)
酒井和郎

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